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No.206                            酒 井 寿 紀                      2002/03/30


携帯電話もWintelに??

 

前号で、パソコンと同じようにPDAでもWintelが事実上の標準になる可能性が高いと記した。では、携帯電話はどうなるだろうか?

現在、携帯電話用のOSとしては、英国のSymbianSymbian OS、日本のμITRON系のOS等が主として使われている。

またブラウザとしては、WMLというウェブ記述言語を使っている海外の携帯電話には、米国のOpenwaveのブラウザが主として使われ、Compact HTMLという記述言語を使っているNTTドコモのiモードの携帯電話には、日本のACCESSCompact NetFrontが主として使われている。

そして現在、NTTドコモはiモードを全世界に広めようとしており、これに歩調をあわせてACCESSCompact NetFrontの海外展開を企てている。

一方、Openwaveは、WMLだけでは今後の市場をカバーできないと、Compact HTMLや、次期携帯電話用の記述言語であるXHTML Basicもサポートしだした。

この2月には、MicrosoftSmartphone 2002という携帯電話用のOSを発表した。これはWindows CEをベースにしたもので、IntelARM系のCPUTIOMAPというCPU上で使われるものである。いわばWintelの携帯電話版である。これにはPDA用のPocket PCと同じブラウザやメール処理ソフトが使え、すでに台湾のCompalというメーカーが次期携帯電話でこのOSを使うと発表している。

携帯電話のCPUとしては英国のARMの系統のものが最大のシェアを占めているが、TIOMAP、日立のSH等も使われている。

このように、携帯電話の世界にはまだ事実上の標準といえるものは存在しない。1970年代のパソコンの世界のようなものである。これは今後どうなって行くのだろうか?

先ず、ブラウザについてはどうだろうか?

前に、本誌No.104(2001/02/18)の「iモード開国!?(コンテンツ)」1) に記したように、携帯電話のウェブをパソコンやPDAでも見たいという要求が今後強まるだろう。そして、パソコンのウェブと同じように、全世界の携帯電話用サイトを世界中のどの携帯電話からも見られることが望まれるだろう。

こういう要求を満足するためには、ウェブ記述言語がパソコン用のものと親和性が高いものでなければならない。それは、将来はXHTML Basicになるのかも知れないが、当面はHTMLの簡易版であるCompact HTMLに近いものが全世界で使われるようになるのではないかと思う。HTML系のウェブのページがすでに全世界にあまりにも多く蓄積されているので、主流がXHTML系に切り替わるのは相当先になると思われるためである。

そのため、当初からHTMLと親和性の高い記述言語やブラウザを扱ってきたACCESSは現在非常に有利なポジションにいるのだが、すでにOpenwaveMicrosoftも同様なブラウザの提供を始めようとしているので、予断は許されない。

次に、PIMやメール処理ソフトについてはどうだろうか?

携帯電話にはあまり複雑なアプリケーション・ソフトのニーズはないだろうが、スケジュール管理やアドレス帳のニーズは高いだろう。そしてこれらは、PDAやパソコンと親和性が高い必要がある。

仕事で外出するときはPDAを携帯し、休日に行楽に出かけるときはよりハンディーな携帯電話を持ち歩くのが普通になるだろう。そうするとスケジュール管理やアドレス帳は、相互に簡単に最新データをコピーでき、使い勝手も似ていることが望まれる。

そしてこれらは、パソコンとも自由にデータを交換できる必要がある。つまり、パソコン、PDA、携帯電話は、それぞれ単独でなく、総合的な情報システムとしてよく考えられたものでなければならない。

そのため、前号に記したようにPDAの世界でWintelが事実上の標準になると、その勢力は携帯電話まで飲み込んでしまう可能性がある。そのもうひとつの理由は、将来のPDAは携帯電話の機能を持ったものが多くなり、また携帯電話にもPDAに近い高機能のものが現れて、両者の境目がはっきりしなくなると思われるためである。

現在、携帯電話の世界では、パソコン等と違い、独自のソフトを使っているメーカーが多いようだ。しかし、携帯電話の機能がパソコン並みに複雑になった結果、開発費の負担が膨大になり、品質の確保が困難になって、昨年は事故が多発した。そのため、CPUOS、ブラウザ、PIM等、それぞれのコンポーネントについて、他社の実績の多い製品を採用したり、他社と共同開発する動きが今後ますます強まるだろう。そして最終的には、Wintelになるかどうかは別にしても、事実上の標準が決まってしまう可能性が高いと思う。

また、CPUOS、ブラウザ、PIM等のコンポーネントは、あくまで他のコンポーネントと組み合わされて、小さいとはいえ立派な情報システムとして使われるものである。従って、このことを無視して、コンポーネント単体としていくらいいものを作ってもだめである。1社で全世界の携帯電話の全コンポーネントを供給すること等できるわけがないので、コンポーネントのメーカーは、事実上の標準がどうなるかを見極めて、それにあわせて製品を開発する必要がある。

従って、現在ひとつのコンポーネントで圧倒的なシェアを誇っているメーカーが、将来もそのシェアを維持できるかどうかは保証の限りでない。

 

1) URL : http://www.toskyworld.com/money/2001/money104.htm


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