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No.105                            酒 井 寿 紀                      2001/02/18


続 iモード開国!? (電話機)

 

前号に続き、NTTドコモの独占が早晩崩れると思われるもう一つの分野を取り上げる。それは電話機の販売である。いや、電話機というのは適当でないかも知れない。情報端末と言うべきかも知れない。

前号に記したように、携帯電話だけでなく、PDAやカーナビからも iモードのコンテンツを見ることができるようになるだろう。そしてこういうPDAやカーナビには、携帯電話機と接続して使うものも、電話機能を内蔵したものもある。

すでに電話機能を内蔵したPDAが米国でも日本でも売り出されている。ドコモ自身も他社と組んでPDAの販売を始めている。しかし、今後のさまざまなユーザーニーズはとても1社で対応できるものではないだろう。

PDAでない普通の携帯電話でも、その機能は驚くほど複雑になってきている。今年の1月にNTTドコモが販売を開始した松下通信工業製のP503iで不良が見つかり、23万台を回収することになった。これは始めてJavaの実行環境を搭載したもので、事前テストが機能の急速な複雑化に追いつけなかったのが不良の原因と思われる。

もうすでに携帯電話はパソコンに近いのだ。ドコモの電話網で使う携帯電話をドコモが一手に販売するということは、インターネットにつながるすべてのパソコンを1社が販売するようなものだ。製品の供給体制上ももう限界である。

昔は、当時の電電公社が電話機をすべてレンタルしていた。この電話機の市場が開放されて、各社が競争してそれぞれ特徴のある電話機を開発し、販売するようになって、いろいろな目的にあった電話機が安く手に入るようになった。欧米ではMotorola、Nokia、Ericsson等のメーカーが、それぞれ自社のブランドで携帯電話を販売している。日本でも遠からずそうなるだろう。

現在ドコモが使っているPDCという通信方式は日本でしか使われてないものだが、今年の5月からドコモがサービスを開始するW-CDMAという次世代の方式は世界の主流になるものである。その為、現在全世界の通信機器メーカーがこの方式の携帯電話を開発中である。これらの携帯電話が使えるようになれば、選択の範囲が広がり、競争で価格も下がるだろう。

前号で、現在の iモードのブラウザは、ドコモのポータルサイトを優先することにより、サイトの囲い込みに一役買っていると述べた。ブラウザを内蔵した携帯電話を各社が自由に開発し、販売できるようになれば、ドコモのポータルサイトを特別扱いするというような問題も解決されるだろう。

前号の冒頭で、現在のドコモは iモードのマーケットで5業種を独占していると述べた。前号の話と合わせて、携帯電話、ブラウザ、ポータルサイトの市場が開放されれば、ドコモの独占事業として残るのは通信回線の提供とプロバイダ業だけになる。

前号で触れた2月5日の日経新聞の最後には、「総務省は独占を排除するため将来、iモードのネット接続業務自体を他のプロバイダーに開放させたい考えだ」と書かれている。残るひとつのプロバイダー業も取り上げたいというのである。

しかし、そこまでする必要はあるのだろうか? 無線ネットワークのプロバイダーという意味では、ドコモの独占でなく、KDDIも日本テレコムグループもある。同一無線ネットワークの中に複数のプロバイダーを存在させるということは、正規のインターネットとの連絡口を独立に複数設けることになるから、システムの安全性の面からも好ましくないように思う。

現在の iモードの鎖国状態を開放させるには、今迄述べたように、その前にやるべきことがあるように思う。

携帯電話のインターネットは、チャパツ、ガングロの女子高生のおもちゃの世界と、正規のインターネットを補完する道具としての世界と、大きく二つに分かれるように思う。

今迄はもっぱらおもちゃの世界が市場を引っ張ってきた。しかしおもちゃの世界は、ファッションと同じで、ブームが過ぎればあっという間に姿を消してしまう。厚底サンダルといっしょである。もちろん携帯電話はこの世界でもゼロにはならないが、いずれ山は越すだろう。食費を切りつめ、食べるものも食べないで携帯電話を使い続けているのはどう考えても異常である。問題はどこまで減るかである。

インターネットを補完する世界が立ち上がるのはこれからである。これがどうなるかはよく分らないが、PDA、カーナビとの使い分けになるのは間違いなかろう。携帯電話の画面が大きくなりつつあり、一方で電話機能付きのPDAが現れ始めているので、このさかい目ははっきりしなくなるかも知れない。

いずれにしても今後携帯電話によるインターネットの世界は大きく変るだろう。それはドコモに限らない。また日本だけの話でもない。そして携帯電話に限った話ではなく、PDA、カーナビを含めたモバイル・インターネット全体の話である。

ドコモの鎖国状態はもう長くは続かないだろう。ドコモにとって開国は、短期的には相当な負担になるだろうが、長期的にはそれしか発展の道はないだろう。

江戸時代の鎖国と同じように、外圧が開国を迫ってくるかも知れない。


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