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エリチェ

ロープウェイが点検中

シチリア島の西端の山の上にエリチェという街がある。紀元前3世紀の第1次ポエニ戦争でカルタゴに敗れる前に繁栄していたそうだ。それ以来、歴史の檜舞台に登場することはなかったが、今でも昔の状態をよく保存しているというので、ここに行ってみた。

パレルモからエリチェへ行くには、まず島の西海岸にあるトラーパニに行く。これにはバスで1時間40分ぐらいかかった。エリチェはトラーパニから10kmぐらいのところにあり、そこへは直接バスで行く方法と、途中までバスで行って、そこからロープウェイで行く方法があるという。ロープウェイで周りの景色を見ながら登る方が面白そうなのでそうすることにした。

ところが、ロープウェイの乗り場のバス停で降りると、ロープウェイが動いていない。人に聞こうにも人っ子一人いない。そのうち、乗り場から人が出てきて、今日は点検のため午後2時まで動かないという。

仕方がないので、トラーパニのバスターミナルまで戻ってバスで直接エリチェに行くことにした。しかし、戻りのバスがいつ来るのか分からない。タクシーもいない。何か聞こうにも、近くに店屋もない。しかし、そんなに長時間バスに乗ったわけでもなく、戻りは下り坂なので、歩いてもたいしたことはなかろうと思って、女房と二人で歩き出した。

しばらく歩くとトラーパニの市街地に入ったので、念のために道を確かめようと、立ち話をしていた男に、「バスターミナルはどこですか」と聞くと、「道路の真ん中にオレンジの並木があるだろう。この並木がなくなるところがバスターミナルだ」と言う。

これで方角は間違いないことが分かった。延々とオレンジの並木が続いているが、そのうち終わるだろうと思っていた。ところが、行けども行けどもこれが続いていて、バスターミナルまで戻るのに結局1時間以上かかってしまった。

そこからバスでエリチェまで行き、街を見物してから、帰りは動き出したロープウェイを使って下山した。個人で旅行していると、時々こういう目に会うが、これもハプニングの一つと思わないと仕方がない。

 

山の上の街

エリチェは標高750mの山の上一帯を占めている。周りは断崖絶壁になっているところもあって、交通は不便だが、防衛には理想的な場所だったのだろう。

カルタゴ軍に敗れる前に繁栄していたというが、さすがに当時の建造物で残っているのは城壁の一部だけだ。現在残っているまともな建造物はノルマン人の時代以降のものである。それでも古いものは今から1,000年近く前のものになる。やたらと教会が多く、ガイドブックで数えると、主なものだけで15ある。

山の上が石造建築でぎっしり埋まっているところは、アッシージなどと同じだ。ほとんど石で作られているので、火事でも燃えず、昔のままの姿で残っているのだろう。

一見、中世にタイムスリップしたような街だが、ここで年に1回自然科学の国際会議が開かれるのだそうだ。

 

(完) 2012年11月12日


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