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(株)オーム社 技術総合誌「OHM 2013年8月号 掲載        PDFファイル

 

スマートフォンがカーナビに!

 

酒井 寿紀Sakai Toshinori) 酒井ITビジネス研究所

 

前号の本コラム「スマートフォンはWi-Fiで!」の末尾に、「今後3Gの主対象は、一般のスマートフォンではなく、車載機になる可能性がある」と記した。本号では、今後のカーナビとスマートフォンの関係について考えてみよう。

 

カーナビがインターネットにつながる!

まず、カーナビとインターネットの関係を見てみよう。現在でも、インターネットにつながっているカーナビがあるが、将来はそれが普通になると思われる。なぜだろうか?

(1)  カーナビは、VICS (Vehicle Information and Communication System)で受信した道路の渋滞状況の情報を、経路の選択や所要時間の推定に利用している。ところが、VICSから直接受信する情報では近隣の状況しか分からないため、長距離ドライブの際、最適ルートが選択されず、所要時間の推定精度が下がる恐れがある(a)全国のVICSの情報を1か所に集めてインターネットで配信すれば、こういう不都合はなくなる。

このようにVICS情報の配信にインターネットが使われるようになれば、現在のような電波ビームや光ビームによる配信は不要になる。

(2)  VICSが利用できるのは、高速道路と主要な一般道路に限られる。そのため、一部の自動車会社やカーナビメーカーは、自社のカーナビを取り付けたクルマの走行状況のデータを、インターネットを使ってセンターに集め、そこに集められた全国の道路状況のデータを自社のカーナビのユーザーにインターネットで配信している。

こうして集められたデータは、「プローブ交通情報」、「フローティングカーデータ」などと呼ばれている。

こういうシステムでは、1つのシステムを使っているクルマが多ければ多いほど情報の精度が上がるので、仲間を増やそうとしている。例えば、トヨタ自動車のG-BOOKは富士重工業やマツダも供用している(b), (c)。また、本田技研工業とパイオニアもデータを相互利用している。

実際には、このプローブ交通情報を全国のVICSのデータと統合して、渋滞状況の予測精度を上げている。

(3)  カーナビにとっては地図が新しいことがきわめて重要である。ところが、DVDなどでの更新は一般に年単位のため、最新情報が必ずしも反映されない。それに対し、インターネットで提供される地図は日単位で更新されるため、これをカーナビに利用すれば、最近開通した道を知らずに旧道を走るようなことがなくなる。

(4)  カーナビがインターネットにつながっていれば、ウェブの豊富な情報をカーナビの画面に表示して利用することができる。

それには、途中のレストランやコンビニ、目的地の天気などの情報がある。もちろんこれらはスマートフォンだけでも検索できるが、カーナビと連動させることによって、経由地や目的地に絞った情報を検索でき、また行きたい店が決まったら、そこへのルートをカーナビに直接表示できる。

このような理由から、今後はカーナビのインターネットへの接続が一般化するものと思われる。

 

インターネットにつなぐ方法は?

カーナビとインターネットの接続には、現在いろいろな方法が使われているが、将来はどのような方法が本命なのだろうか?

(1)  まず、カーナビ専用の3G(または4G)の通信機能を使う方法がある。この方法は、カーナビの提供者にとって、自社の特長を出しやすいメリットがある。しかし、別にスマートフォンを持っているユーザーとっては、3Gの契約が二重に必要になり、ウェブの表示機能や地図のアプリケーションも二重に持つことになる。

(2)  そして、スマートフォンでインターネットにつなぐ方法がある。

その第1は、スマートフォンを単にカーナビをインターネットにつなぐ道具として使うもので、3Gの契約の二重化は防げるが、地図のアプリケーションの二重化などは前記の方法と変わらない。

2に、スマートフォンのナビゲーション機能だけで済ます方法がある。これは最も簡便だが、画面サイズ、操作性などに制約がある。

そして第3の方法は、主としてスマートフォンのナビゲーション機能を使い、画面の表示とボタン操作を簡便な車載機で行うものである。

例えば、パナソニックがトヨタ自動車に供給している「スマホナビ対応ディスプレイ」は、こういうシステム用の車載機である。価格は68,250円で、一般のカーナビよりはるかに安い。そして、20136月から、専用のアプリケーション・プログラムを使えば、プローブ交通情報やVICSの情報も利用できるようになった。

こういう第3の方法を使えば、3Gの二重契約は不要で、地図のデータベースやナビゲーションのアプリケーションを二重に持つ必要もない。

この方式の他の利点は、行き先の検索や設定、ルートの調整、関連施設の検索などを操作性が良いスマートフォンの画面でできることだ。また、クルマを離れた後、スマートフォンを取り外して、徒歩用のナビとして使うこともできる。

そして、クルマを買い換えたときも、スマートフォンに登録済みの行き先データなどをそのまま継続して使える。

したがって、売り上げが減ってしまうカーナビメーカーや、自社独自の特長を出しづらくなる自動車会社の抵抗に合うかもしれないが、将来はこういう方式が普及するものと思われる。

 

[関連記事]

(a) 「VICS」、一般財団法人 道路交通情報通信システムセンター  (http://www.vics.or.jp/index1.html)

(b) 「Smart G-BOOK」、トヨタ自動車 (http://g-book.com/pc/default.asp)

(c) 「トヨタ自動車、ビッグデータを活用した新しい情報サービスの提供を開始」、2013年05月29日、トヨタ自動車

             (http://www2.toyota.co.jp/jp/news/13/05/nt13_0511.html)

(d) 酒井 寿紀、「続・スマートフォンがカーナビに!」、OHM、2013年9月号、オーム社 (http://www.toskyworld.com/archive/2013/ar1309ohm.htm)

 


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