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(株)エム・システム技研 「MS TODAY2007年11月号 掲載        PDFファイル [(株)エム・システム技研のご提供による]

ITビジネスから見た海外事情

 

(第11回) フランスの旅から

酒井ITビジネス研究所 代表 酒 井 寿 紀

 

ベースキャンプ方式で

今年の5月から6月にかけて、女房と二人でフランスへ行ってきました。まず、トゥールーズで5泊し、そこをベースキャンプにして、日帰りでカルカッソンヌ、アルビ、カオールという中世の建造物が残っている地方都市に行きました。そのあと、パリで5泊して、プロヴァンとフォンテンヌブローというところへ行きました。

以前、イタリアで、鉄道の途中下車を使って地方都市をいくつか訪れたことがありますが、ヨーロッパでこういう一筆書きの旅をするのは大変でした。日本と違って、かなり大きな駅でもエレベーターやエスカレーターがなく、また、プラットフォームと列車の床の高低差が大きいため、大きな荷物を持って鉄道を利用するのは容易ではないからです。そのため、最近はベースキャンプ方式に切り替え、飛行機で行けるところをベースキャンプにして、そこから鉄道で1時間程度で行ける範囲を日帰りで訪ねることにしています。

訪問先のうち、カルカッソンヌ、プロヴァン、フォンテンヌブローは世界文化遺産になっています。アルビやカオールにも大変古い建造物が残っています。これらの街を見て、スケッチを描くのが今度の旅行の主目的でした。一例として、カルカッソンヌで描いたスケッチをこのページに掲げておきます。今回は、文化遺産の話は別にして、このフランス旅行で感じたことをいくつかご紹介しましょう。

 

ヨーロッパの天候にご用心!

今までの経験から、ヨーロッパの5月、6月は天気がよく夏に近いような日が多いという感じを持っていました。というのは、たとえば、以前6月にデンマークのコペンハーゲンに行ったときは、北緯56度で樺太の北端よりさらに北だというので、かなり寒いのではないかと思っていたところ、東京近辺と変わらない気温で、ショートパンツにランニングシャツでジョギングしている人がいて大変驚きました。また一昨年、5月末からスペインに行ったときは、連日35度の暑さで、日差しも強く閉口しました。

ところが今回、出発前にインターネットでヨーロッパの天気予報を調べると、今年は気温が低く雨続きでした。トゥールーズでの初日は一日中土砂降りで、スケッチどころではありませんでした。次の日はカルカッソンヌに行ったのですが、気温が1213度しかない上に風が強く、念のために持っていったセーターを着て震えながらスケッチを描いていました。それが7月下旬には、45度まで気温が上がったところがあり、何百人も死者が出たというのです。どうも最近のヨーロッパの天候は極端にぶれるようです。

 

ノートパソコン大活躍

海外へ出かけるときは、いつもノートパソコンを携行します。主目的がスケッチなので、雨だと仕事になりませんから、毎日Yahoo! の天気予報で各地の翌日の天気を調べ、一番天気がよさそうなところへ出かけました。Yahoo! には世界各地の小さい都市の天気予報まで出ているので助かりました。

今までヨーロッパのホテルでは電話回線でインターネットにつないでいましたが、今回はトゥールーズのホテルでも、パリのホテルでも無線LANが使え、快適にウェブを閲覧することができました。ブロードバンドの普及でウェブのページがどんどん重くなっているので、これからは旅行先でも無線LANなどの高速通信インフラが不可欠になるでしょう。

テレビのフランス語のニュースは分らないので、ニュースはもっぱらインターネットで見ていました。ある日CNNのサイトのトップニュースに松岡農水相自殺の記事が写真入で出ていて大変驚きました。インターネットのおかげで、昔のように帰国したときに浦島太郎状態になることはなくなりました。

 

英語を話す人激増

フランス人はプライドが高く、英語を話せても話さないと昔から言われています。私の経験でも、フランス語圏であるジュネーブのあるレストランに英語で予約の電話を入れたところ、「フランス語を話せ!」と言われて驚いたことがあります。ジュネーブのような国際都市で、しかも日本の旅行会社が契約しているレストランでさえこの有様でした。

ところが今回は、英語を話す人が増えたのに驚きました。フランスの国鉄の窓口の人、レストランのウェイターやウェイトレス、店屋の従業員など、かなりの人が英語を話すようになっていました。仕事上英語の必要性に迫られて、フランスでも外国人を相手にするときは英語を使うのが普通になりつつあるようです。「フランス語は世界一きれいな言語だ!」とうそぶいていた時代は過去のものとなりつつあるようです。

 

「私、日本大好き!」

カルカッソンヌの旧市街のレストランで昼食をとっていたとき、若いウェイトレスが「日本人ですか?」と聞くので、「そうだ」と答えると、両腕を胸の前で組み合わせて、「私、日本大好き!」と飛び上がらんばかりに喜ぶので、こっちの方がビックリしてしまいました。「日本の何が好きなの?」と聞くと「マンガ、料理」とのこと。カルカッソンヌのような地方都市にも日本料理屋があるのだそうです。どんなマンガがフランスではやっているのか興味があったのですが、何せ私の知っている日本のマンガといえば「のらくろ」、「サザエさん」、「鉄腕アトム」ぐらいで、最近のものはまったく知らないし、私のフランス語は複雑な話には耐えられないのであきらめました。そのウェイトレスはなんと背中に「日本」と漢字で刺青までしていて、尋常一様な日本ファンではありませんでした。最近の「マンガ」、「アニメ」、「カラオケ」などの輸出で、欧米と日本の文化面での貿易収支の帳尻も少しは均衡状態に近づいたのではないでしょうか?

パリで日本趣味を取り入れたというレストランに行ってみました。そこの天井には、芸者が寝そべっていて、はだけた裾から太ももまで見える姿が天井いっぱいに描かれていました。そして、日本料理の薄味を取り入れたらしい魚料理はまったく味のないものでした。こういうレストランがパリの一等地で大繁盛しているのは、まったく理解できませんでした。日本文化の輸入は結構なのですが、悪趣味やまがいものの輸入には困ったものです。

 

日曜はダメよ

パリから日帰りでフォンテンヌブローへ行きました。もちろん世界遺産の宮殿を見るのも目的の一つでしたが、もうひとつ、そこから近いバルビゾンという小さな町に行ってみたいと思っていました。ここには、ミレー、コローなどの有名な画家が何人も住んでいたことがあり、現在もその住居跡が見られるからです。そこで、フォンテンヌブローの宮殿の前の観光案内でタクシーを呼んでもらうことにしました。そこの女性は親切で、タクシー業者に片っ端から電話をかけてくれたのですが、結局1台もつかまらず、バルビゾン行きはあきらめました。日曜日のためどこも休みだということでした。やはりフランス人は働くことより休むことを優先しているのだと再認識しました。サルコジ新大統領は、「フランス人はもっと働け!」と言っていますが、働かない習慣が身にしみついてしまっているので、短期間に変えることは至難の業だと思います。

 


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