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オーム社 技術総合誌「OHM」2005年10月号 掲載        PDFファイル

(下記は「OHM20093月号の別冊付録「ITのパラダイムシフト Part U」に収録されたものです)

 

スペイン、ポルトガルの旅から

 

酒井 寿紀  (さかい としのり) 酒井ITビジネス研究所

 

もうガイドブックはいらない

2005年の6月に、スペインとポルトガルに10日間ほど行って来た。海外に行くときは、現地の情報をインターネットで調べ、予約できるものについては予約することにしている。

ホテルの情報は、米国の旅行サイトが詳しい。プールの有無、ペット同伴の可否、インターネットの接続手段なども出ている。それに比べると、日本の旅行会社のサイトの情報はお粗末だ。ただ、料金は、米国の旅行サイトの方が日本のものより安いとは限らない。今回は、バルセロナ、マドリッド、リスボンの3か所で宿泊したが、料金を比較して、日本の二つの旅行会社を利用した。インターネットの普及で、各社の料金が容易に比較できるようになったので旅行会社も大変だ。

美術館や博物館も、英語で情報を提供しているところが多い。例えば、マドリッドのプラド美術館のサイトを見れば、開館時間や入場料のほか、館内の展示室の配置まで分る。また、バルセロナのピカソ美術館は、設立のいきさつやピカソの年譜も掲載している。もっとも、英語で説明があるのは大きい美術館などで、小さい施設はそうはいかない。

マドリッドに、ヘミングウェイがよく行ったという、ボティンという有名なレストランがある。英語でのマドリッドの紹介サイトには、そのレストランの1725年の開店以来の歴史が出ていて、メニューの現物の写真も掲載されていた。

また、フラメンコのショーを見ようと思い、コラル・デ・ラ・モレリアという店のサイトを調べた。この店には、ブランカ・デル・レイという有名なフラメンコ・ダンサーが出演していて、マレーネ・ディートリッヒやケネディ大統領なども来たことがあるという。

マドリッドから、日帰りでトレドに行った。列車で1時間半ぐらいのところだ。スペインの国鉄のサイトを調べると、詳しい時刻表から、食堂、電話、新聞などのサービスの有無まですべて出ている。前に利用したイタリアの国鉄のサイトも同じだった。もうトマス・クックの時刻表(全ヨーロッパの鉄道の時刻表を掲載)を買う必要もなくなった。インターネットの時刻表を使えば、内容が古くなってしまっていることもない。

Yahoo! の旅行情報には、街を歩くときの推奨コースや名物料理など、すべて出ている。もうガイドブックを買う必要はない。もっと詳しく調べたい人のために、関連サイトへのリンクもある。また、何百ページもの分厚いガイドブックを持ち歩くより、必要なウェブページを印刷して、その日必要な分だけを持ち歩く方が、はるかに軽くて便利だ。旅行案内の出版社は今後大変だろう。

 

旅行会社は予約サイト運営会社に

インターネットで、情報の入手だけでなく、飛行機やホテルの予約もできる。しかし、日本の旅行会社のサイトには、情報は提供していても、予約は電話でしか受け付けないところもある。電話をすると、従来同様、担当者が決まって、何回も書類を郵便でやり取りすることになる。インターネットを使うなら、予約もインターネットで行って人件費を減らし、その分値下げしてくれた方がいい。日本でもいずれそうなるだろう。決まった担当者など必要ないし、ウェブページを印刷すれば済む地図をわざわざ郵送してくれることもない。

前出のコラル・デ・ラ・モレリアにウェブで予約すると、了承のEメールを送ってきた。これは、前にウィーンのコンサートを予約したときも、ハワイのホテルを予約したときも同じだった。書類の郵送などいっさいない。コンサート会場の入口で、受信したEメールを印刷したものを見せれば入場できるので、チケットなどいらない。今後どの国でも郵便事業は縮小していくだろう。

現在、日本でまだ従来通りのやり方が一般的なのは、顧客が、担当者が決まり、書類を受け取ると安心するからなのだろう。しかし、それは高コストの原因になっている。顧客も早く頭を切り替えないと、サービスの国際化の時代に、日本の企業は海外の企業との競争に負けてしまう。

最近は、旅行会社に足を運ぶことがまったくなくなった。将来は、さらに、郵便でチケットや書類を受け取ることもなくなるだろう。旅行会社は、旅行情報を提供し、予約を受け付けるウェブサイトの運営会社に変わっていくことになる。

 

英語を第2言語に

タクシーなどで英語がほとんど通じないスペインでも、インターネットでは相当な量の情報が英語で公開されている。やはりインターネットの世界では英語が公用語である。この公用語を利用できる人とできない人では、今後の国際社会での活動に大きな差がつく。これも一つの「ディジタル・ディバイド」だ。

今後は日本人も、生活や仕事に、全世界のウェブサイトの英語の情報を使いこなせるようになる必要がある。そのためには、英語を「外国語」でなく、日本語に次ぐ「第2言語」にすることが必要だと思う。

外国語は入学試験でふるいにかける手段であり、その習得自身が目的だが、第2言語は、日本語と同様、情報を入手し、それを記憶し、意思を伝達する道具である。道具を使いこなす力を付けるには、若いうちから、単に勉強するだけでなく、常時使うしかない。東南アジアなどに我々より英語がうまい人が多いのは、彼らが英語を使わざるを得ない環境にあるからだと思う。

OHM200510月号

 

[後記] 2007年にフランスに行ったが、フランスの店屋やレストランで英語を話す人が増えたのに驚いた。以前はフランスでは大都会でもほとんど英語が通じなかったが、この1020年でずいぶん変わったようだ。やはり商売で必要に迫られれば、昔のように「フランス語が世界で一番きれいな言語だ」などとうそぶいてはいられなくなったようだ。EUの統合で人の行き来が激しくなったが、最も共通に通じる言葉はやはり英語なのだろう。そしてインターネットの世界では英語が公用語であることも影響していると思われる。

 


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